お題:ゆるふわな行動 必須要素:MD  焚き火

 劣化していく昔のメディアに追悼の意を捧げてすべて燃やしてやろうと思った。
「今から焼こうぜ!」
「おけー」
「私もいくー」
「いいじゃん」
 深夜番組のエロカットだけ頑張って録画したビデオ、ビデオデッキ、ピグモン、枝、ウルトラマンウルトラマンレオ宇多田ヒカルのCD、スネオヘアとボニーピンクが入った水色のMD、BUMPの青色のMD、ステッカー、エルレのオレンジ色のMD、倉木麻衣のピンクのMD、アジカンの紫のMD、ミスチルのCD、毛布、イカ、菓子箱の底に余ってた英語書いてある菓子、硬いテディベア、どんぐり、エロ動画の見過ぎで壊れた父のパソコン。
 四人で神社に集合し鎮守の森付近の土スペースに、のばあちゃんが作ったでかい藁箒で枯れ葉を集めた。前にでかい大木が除草剤の影響でぶっ倒れたところに、ちょうど四角い穴がある。切り株を掘り起こしたからそこだけ子供が四人ほどすっぽり入れそうな空間だった。そこに枯れ葉を入れてく。黄色くなった紅葉の葉っぱでカラフルな落とし穴にするのもいいと思った。風が冷たく、俺は早く燃やしたかった。境内には潰れた銀杏が散らばっていた。「くっさい」「くさー」「こういうのがいい匂いに感じる時がやってくるのだろうか」
 枯れ枝と枯れ葉を30分ほどで集め高瀬のライターで枯れ葉に火をつけようとした。紅葉の葉に火はついたがそのまま燃え尽きて燃え移らない。
 ポケットティッシュを燃やして枝に炎を燃え移らせる。風で消えないよう四人で穴を囲む。なんか笑えた。何を考えていたのか生肉を買ってきたシホノが牛脂を枝にくくりつけて燃やし始めた。ぽたぽたと垂れていく油を枯れ葉全体に広げさせて燃え上がった枝をつけるといい具合に火がついた。
「……暖かい」
「文明の利器!」
「炎とは……喜び」
「善なりかな」
寒さが解消されてほんわかした。重ねた太い枝に燃え移りぱちぱちと音をたてて燃え安定し始めた。
「なんか燃やすとやばいもんとかあったっけ。ダイオキシンとか。プラスチックとか機械とかやばくねーか」
「いいやんもう、無礼講」
「そうです!」
「そうかー、やってしまうかー」
一個ずつ炎の中に放り投げた。思いの外謎の悲しみがやってきた。
俺だけじゃ無かったようで皆いい感じのしんみり顔だった。
燃え始めてから煙がもくもくと上がってきたのでやばいと思ってみんなで土をかけて鎮火した。
冥福を祈る。